大阪高等裁判所 昭和57年(う)1331号 判決 1983年1月28日
本籍
大阪市阿倍野区天王寺町北三丁目一二〇番地
住居
同町南三丁目一〇番八号
会社役員
橋野實
昭和一〇年六月一九日生
本店所在地
大阪市阿倍野区天王寺町北三丁目一二番一七号
サンライン株式会社
右代表者代表取締役
橋野実こと
橋野實
右両名に対する法人税法違反被告事件について、昭和五七年七月二〇日大阪地方裁判所が言渡した判決に対し、被告人両名から控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。
検察官 難藤務 出席
主文
本件各控訴を棄却する。
当審の訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人前田嘉道作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。
論旨は、原判決の量刑は重きに失し不当であるというので、所論にかんがみ記録を調査し、当審における事実調べの結果をもあわせ検討するのに、本件は、原判示の二事業年度にわたる所得額が合計一億一、〇五二万円を超えるのにわずか五三万四、一四四円の所得しかなく、納付すべき法人税がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、法人税額合計四、二〇八万七、五〇〇円を免れた事犯であり、ほ脱率百パーセントで、ほ脱税額も少なくないうえ、取引先と口裏を合わせて作為を施し、従業員に裏帳簿を作成させ、あるいは架空ないし他人名義の預金口座を作出・利用して受取手形の操作を行うなど犯行手口が悪質であり、犯行の動機も被告人橋野の蓄財に帰するのであり同情の余地がないことなどに徴すると、被告会社従業員の失火などが契機となったこと、本件法人税の修正申告をして分割払を履行していることなど諸般の事情を十分斟酌しても、被告人橋野を懲役一〇月、執行猶予三年に処し、被告会社を前記ほ脱額の約二八・五パーセントにあたる罰金一、二〇〇万円に処した原判決の量刑はこの種事件の科刑の実情に照らし不当であるとは認められない。論旨は理由がない。
よって、刑事訴訟法三九六条、一八一条一項本文、一八二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 村上幸太郎 裁判官 田中清 裁判官 八束和廣)
○ 控訴趣意書
被告人 サンライン株式会社
被告人 橋野実
右の者に対する法人税法違反被告事件についての控訴の趣意は左記のとおりである。
昭和五七年一一月四日
右弁護人 前田嘉道
大阪高等裁判所第六刑事部
御中
記
原判決の量刑は不当であるから破棄軽減を求める。
本件犯行の動機は、従業員の失火による工場事務所の全焼による打撃から立直るためと、被告人橋野の十二指腸潰瘍という持病による先行不安から、少しでも被告人会社の財政的基盤を確立しておきたいとの一途の願いから出たものであって、それ程悪質なものではないから原審の量刑は不当に重いというべきである。